こんにちは。研究員の鈴木みくです。

今回は、「お菓子をたくさん製造すること」について、お話していきたいと思います。
 
日常のちいさな幸せに気づくきっかけになるような、心がほっくりするおやつを提供したいな~と考えて作った日常芋飯事。
できるだけシンプルに、こだわりのさつまいも原料を使って仕立てた素材感あふれるおやつですが、現在は私たち研究員が手作りしたものをお届けしている段階です。
 
このおやつ、まだ機械を使ってたくさんのものを作るための準備が整っていません。
それでも手作りでお届けしているのには理由があります。
「こんな形態で、こんな味で、こんな気持ちの時に食べてほしい。」これらを全部決めて、素晴らしい完成形になったものをたくさん製造し、多くの人に美味しさをお届けするのもひとつの在り方です。

でも、このおやつプロジェクトでは、みなさんから日常生活のほっくり話をたくさん伺って、遠くのだれかの生活に想いを馳せながら、未完成のおやつのことをみんなで決めていきました。
そうやって誰かが誰かのために試行錯誤した道のり自体がとても温かく、その温かさが日常の幸せにつながる、と思ったからこそ、未完成の状態からみなさんと一緒にプロジェクトを始める意味があると思いました。
 
ただ、いまの手作りのままでは、どうしても届けられる人数には限界があります。
みんなで想いを込めて作ったおやつを、たくさんの人に届けたいですし、日常の中に小さな幸せを感じられる瞬間が少しでもたくさんの人に広がったら、それはとても嬉しいことです。
手作りのものにある美味しさ、温かさはそのままに、たくさんの方にお届けできるよう努力をしていきたいと思っています。それには機械や工場の力も必要です。
ここでは、「お菓子をたくさん作る」とはどういうことか、その一部を紹介していきます。


○まずは「原料の配合」ありき!   

お菓子を作るときに大切なことは原料の配合や製法です。私たちはこの技術を磨き続けています。
『日常芋飯事』に使用するのは、ひとつひとつこだわったさつまいも原料。

さつまいもは8月くらいから年末にかけて収穫され、貯蔵されます。この期間中にさつまいもが持つ酵素がでんぷんを分解していくので、どんどん甘さが増していきます。
9月に新物のさつまいもを食べるよりも、冬まで貯蔵されたさつまいもはグッと甘くなっているのです。

さつまいもは農作物です。天候や畑によっても味が違い、貯蔵期間や温度でも甘さや味わいに幅があるのは自然なことです。

一方で、『心ほっくりおやつ』で私が目指しているのは、いつ食べても、ひとくちで「あ~幸せ♥」と満足する濃厚で蜜っぽい甘さと優しい食感。そして溢れるさつまいもの素材感。
自然からいただくさつまいも原料の幅を受け入れながら、おやつとしての魅力だけはブレないようにしようと、配合比率、混合順、作業の条件などを調整しているのです。これがとても難しくて、試行錯誤を重ねています。
 

○手作りから機械へ……製造ラインの調整
 
IMG20220819141609.jpg 1.83 MB『心ほっくりおやつ』、今は手作りをしていますが、どうしても作れる数に限界があります。多くの人にこの美味しさを届けるために、機械の力を借りることも必要。

お菓子を作るためには、原料を混ぜる、焼く、冷やす、包装するなど、さまざまな機械が使われています。
これにも素材に合ったものを選ぶプロがいるんですよ。
例えば、「生地を練るときの力加減はこうで、羽状の部品の形状と動きはこうした方がもっとおいしくなるだろう」など、機械のプロや現場の方と話し合いながら調整していきます。

私もこれまで多くの商品に関わってきて、現場の方と話していておもしろいなと思ったのは、「今日はこの機械はごきげんだね」とか、「あれ?    今日はしょっちゅう止まるな。湿度のせいかな」なんてことがよくあるんです。
現場の方や、機械の担当者は、機械も「仕事をする仲間」ととらえて、向き合っています。

私が研究員の仕事をしていてドキドキする日は、魂を込めて開発したお菓子を、現場のテストにかける日。
テストが成功すると、「これでやっとお客様にお届けできる!」と大喜びします。
しかし、うまく行かなかった日は機械のプロや現場の方からアドバイスをいただきつつ、「明日からまた研究所で調整だ」と自分を奮い立たせるのです。
 

○協力してくれる会社に出会う

『日常芋飯事』は、シンプルだけれども手間がかかり、奥深い作り方をしています。
そのため、それに合致する機械を持ち、製造を受けていただける工場を探さないといけないのですが、探しても、探しても、ない(涙)。
衛生環境、設備、会社同士の信頼関係、生産量などさまざまな条件が合致しなくてはなりません。

こちらの工場は手一杯、あちらの工場は手は空いているけれど機械がないなど、なかなか折り合いがつかなかったのですが、電話やメールで地道に探しました。
何度か心折れそうになりましたが、絶対にあきらめたくなかったので、しぶとく問い合わせる日々…。
そんな中、ある会社の代表が話を聞いてくださることに。

育休時代にこのおやつを作りたいと思ったきっかけの話、鹿児島県のさつまいもを使って新しいおやつに仕立て、ほっくりできる時間を世の中のみなさまに提供したいということ、でも販売先は決まっていないことなどを正直にお話しました。

そうしたら、なんと「いいですよ。どんなに小さいところからでもいいから、一緒にやりましょう」と言ってくださったのです。拍子抜けするくらいさわやかに明確に答えてくださいました。
私の想いをとても肯定的にとらえてくださる方との貴重な出会いでした。
一緒に挑戦したいと思ってくれる仲間がいることは本当に心強いです。

もしかしたら、このおやつには完成形はないかもしれない。
これからも、みなさんの想いをおやつにのせて、温かさごと誰かにお届けできるよう、いただいた投稿やコメントを商品開発にしっかりと反映させ、一緒に作っていきたいと思っています。