こんにちは。研究員の鈴木みくです。

日常の小さなしあわせに気づくきっかけになるようなおやつを開発したい、という想いからスタートしたこのプロジェクト。
2021年夏には共同開発のオンラインイベントを開催しました。

Pon!Pon!プロジェクト    なんでもない日にありがとう#01 「心ほっくりおやつ」を共同開発! | クラウドファンディング - OUR TeRaSu
(終了したイベントです)

このイベントの大きな目的は、おやつを食べてくださる皆さんと一緒に「心ほっくりおやつ」の商品開発をすることです。

私たちメーカーの研究員は、一つのお菓子をリニューアルするにあたって、100種類以上の試作を行っています。新商品の企画となるとその数は計り知れません。

お菓子を買って食べてくださる方が、どんな味、どんな食感、どんな香りを求めているか、などの仮説を立てながら、日々試作や議論を行い、それぞれが一生懸命に美味しさを追求し続けています。

味のベースは変えずに微妙な調整をしていくもの、大きく味の方向性を変えるもの、様々な改良がおこなわれますが、すべてに共通しているのは、お店に並んだたったひとつの商品の裏側には、食べてくださった方に笑顔になっていただきたい、という想いが込められている、ということです。

お菓子はとてもデリケートで、原料の配合、製造条件などでガラッと表情が変わりますが、単品で食べるとその違いが判らない。
でも食べ比べると、味、香り、口当たりなども含めてガラッと変わっていることに気付きます。

この試作品のブラッシュアップは、開発の仕事でワクワクするところかもしれません。「遠くの食べてくれる人を思いながら」試作品を作る。
そしてそれを、「誰に、どんなシーンで食べていただき、どんな気持ちになってほしいか」をさまざまな角度から考えつつ、味にイメージや言葉を充てて、どの味にするかを決めていくのです。

この共同開発イベントでは、最終的にお店に並んだひとつの商品を食べるだけではなかなか見えてこないような、お菓子の裏側にある開発体験をしていただきました。

試作品の味の感じ方の違いをみんなで楽しんだり、このお菓子を誰にどんなふうに届けたいか、みなさんの想いを融合させながら商品を作り上げたいという思いがあり、参加者の皆様には、事前に開発中のさつまいものほっくりおやつ8種類の試作品をお送りしました。
29581_1.png 368.01 KBこの「ほっくりおやつ」は、口の中でさつまいもの素材感が溢れるようなイメージで作っています。
原材料表示は、「焼き芋ペースト、さつまいも蜜、芋麹、焼きいもパウダー」。
安心して「ほっくり」していただけるよう、なるべくシンプルな原料を使っているのですが、しっかりと甘く、ねっとりと濃厚で、この日のイベントに参加していただいた方からも「いもを超えるいもだ!」と驚きの声が上がるほど、満足感のあるスイーツです。
 
他にも、「砂糖やバターがあとから足されていないのに、なぜこんなにスイーツっぽく感じるの?」と質問がありました。

それは麹菌に秘密があります。麹菌の産生する酵素がさつまいものでんぷんを糖に分解することにより、素材の自然な甘さが引き出されています。

麹菌は、素材の甘さを引き出すだけでなく、上手に育つと栗のようないい香りがすることも特徴のひとつです。
芋麹を多く配合した試作品は、「栗っぽい香りがする!」「芋焼酎に通じるフルーティーな香りがする」と敏感に気付かれた方もいらっしゃいました。

このお菓子の開発は、芋麹との付き合いを深めた時間でもありました。ある意味「生き物」との格闘は初めての体験。
芋麹が働く時間、温度、時間、水分量で、お菓子の味わいが大きく変わっていくので、目からウロコの発見が毎日のようにありました。

参加者のみなさんと一緒に試食したものは、これまで検討した100種類超の試作品の中から、美味しすぎて選びきれないものや、特徴がはっきりしていて好みが分かれそうなもの、感じ方の違いを楽しんでいただけそうなものなど、厳選した8種類の試作品でした。


オンラインの投票機能を活用しながらワイワイと意見交換をしていきましたが、なんと、ひとつとして評価が偏ったものはありませんでした。
同じものを食べても人によって感じ方が異なること、さらにその背景にある理由がとてもユニークです。
「蜜っぽい焼き芋が大好きだから、これが好き」「お酒が好きだから、なんとなく発酵感漂うこれが好き」「栗が好きだから、これが好きな香り」。

商品開発に裏側があるのと同じように、食べていただく方の「美味しい」の裏側にもさまざまな背景があり、お互いの感じ方の違いを楽しむことでなんだか人生が豊かになったような気がしました。
 
さらに、このほっくりおやつを「誰に、どんなシーンで食べていただき、どんな気持ちになってほしいか」についてもみなさんと一緒に考えました。
「育児中の息抜きに片手でぱくっと」、「残業終わりに疲れた体を癒してOFFモードにしたい」、「夫婦で夜にちびちび食べたいです」など、日常のほっくりするワンシーンを思い浮かべていただいた方が多かったです。

私自身は、自分が開発中のお菓子の試作品を社外の人と一緒に食べるのは、ほぼ初めての経験で、試食自体もとても楽しかったですし、みなさんの人生の背景や想いをどうお菓子に落とし込んでいくか、想像してワクワクしっぱなしの時間でした。

こうしてイベントをさせていただいて、初対面の人同士なのに(しかもオンライン)、おやつを囲んでこんなに心をオープンにキラキラした笑顔でお話してくださる姿、人との違いを楽しむ姿を見て、おやつっていいなあと改めて思った時間でもありました。