こんにちは。研究員の鈴木みくです。
 
日常芋飯事の次の製造にむけて準備中のため、これまでの裏話をしてみたいと思います。

(エンゼルプラスのシリーズブログ「鈴木みくの今日もおやつ開発中」https://ap.morinaga.co.jp/article/angel_blog/project/29289/ の内容とほぼ重複します。すでにこちらを読んでいただいた方には、プチあとがきを追記しておりますので、振り返っていただきつつあとがきをお楽しみくださいね。)

2019年夏、新型コロナウイルスの気配すらなかった頃、「日常芋飯事」の主原料・さつまいもを探しに鹿児島弾丸日帰り出張をしたお話です。
 

〇さつまいもの研究者や技術者から学びたい!

あれは、娘が1歳半くらいのとき。職場復帰後3か月目で、時短勤務をしながらようやく仕事と育児の両立に慣れてきた頃のことです。

当時の娘は、保育園に慣れ始めたころで、めざましい成長を遂げていました。
半日会わない間に、いろんなことができるようになっており、可愛くて愛おしい。
だから私も「保育園に預けている時間以外は全力で接したい!成長を見逃したくない!」と思っていました。

仕事では、さつまいもを使ったスイーツの開発をスタートし、情報収集をしていました。
しかし、スイートポテトや芋けんぴ、さつまいも味のお菓子はたくさんあるものの、さつまいもを95%もの主原料として使う商品は焼き芋、干し芋くらいしかありません。
こういう時は、その道の専門家に直接教えていただくことが、最もよいと思い、さつまいもの一大産地・鹿児島県に行こうと決意したのです。
 

〇さつまいも収穫量国内1位、歴史も深い鹿児島県

さつまいもは、1600年ごろ中国から琉球(沖縄県)、そして薩摩(鹿児島県)に伝わったのでさつまいもと呼ばれているそうです。
現在も、鹿児島県は国内最大の生産量を誇っています。
農業と研究の歴史が深い鹿児島県で情報を入手したいし、原料として使うなら直接関わっている人と話をしたい。
そこで日帰りで鹿児島に出張に行くことにしました。出張のメンバーは私の上司と、先輩と計3人。
現地の専門家にお会いする予定を10時~15時くらいの間にギュッと詰め込みました。

まず、お話を伺ったのは、鹿児島県のさつまいもの事情(加工用として収穫される量、入手できる時期、貯蔵期間、栽培されている品種特性など)、注目していた芋麹について。
現地の研究者の方をご紹介いただき、直接お話を伺いました。
 

〇鹿児島の方言に癒されつつ、専門知識を学ぶ

さつまいも加工の研究者、焼酎や麹の研究者の皆さまからも、多くのことを学びました。
鹿児島の言葉のイントネーションがとても優しくてほのぼのした気分になり、また家族で来たいなあと思ったのを覚えています。
また、会ってくださった方は、みなさんさつまいもの研究者なので、舌を巻くほどさつまいもに詳しい。
手元に資料がなくても膨大なデータや情報を、そらで話してくださり、知識の量とその深さに圧倒されました。
いただいた情報を活かして、「これまでにないさつまいものスイーツを作る!早く研究所に戻って試作したい!」と強く思ったのです。
 
 
〇用途別に品種が異なるさつまいもの世界

さつまいもは、用途によって適した品種が異なり、収穫後の貯蔵期間に起こる変化も様々、とのこと。
収穫してから貯蔵中に少しずつでんぷんが糖に分解されます。
これが品種によって分解スピードも違い、構成している糖の組成にも違いがあるなど、特性があることを教えていただきました。
澱粉含量の多いコガネセンガンは焼酎用に、スクロース(ショ糖)を比較的多く含む紅はるかは強い甘みと蜜っぽさから菓子やパン用に、などそれぞれ個性があり、さつまいもの魅力に改めて気づかされました。

このように、たくさんある品種の特性を活かして、青果用、焼酎用、お菓子用など用途に適した品種のさつまいもが栽培されています。
さつまいも農家の方々や研究者の方々が培ってきた、品種改良や開発の歴史、その積み重ねに感動する時間になりました。
 
~鹿児島弾丸出張・後編につづく~


【プチあとがき】
鹿児島県といえば、さつまいも以外にも、黒豚!黒牛!さつま鶏、さつまあげにカンパチ、おいしいものがたくさん。
あれもこれも食べたいな、と思っていたのですが、甘かった、、、研究者のみなさまの話が面白すぎて、つい時間を忘れて聞き入り、ランチはラーメンを超特急で食べました。

でもそこは鹿児島ラーメン!豚骨のコクは充分、でもギトギトしていなくてあっさり飲める、野菜ももりもりの美味しいラーメンでした!!
唯一食べられた鹿児島名物。嬉しかったなぁ。

さて、日本では現在さつまいもの「基腐病(もとぐされびょう)」という病気が蔓延しているそうで、特に鹿児島県がある南九州地方ではここ数年、収量がかなり減ってきています。
農家さんは毎年対策を講じていますが、原因である糸状菌の力が強く、徐々に関東にまで広がっているようです。

スーパーにはいつでもいろんな食材が並んでいて、農作物の病気のニュースを知ることはあまり機会がないですが、全国各地、あらゆる農家さんにおいて防除のご苦労があるんだろうなと想像すると、感謝して食べること、残さず食べること、無駄なく作ること、いち生活者としてもメーカーとしても考えさせられます。